家族が亡くなったときの相続問題。もし持ち家の場合、不動産登記の名義変更も避けて通れない。その家の持ち主が誰になるのか、いまから明確にしておかなければならない。
というのも、今後、不動産登記を忘れただけで、大きな損をすることになるからだ。日本司法書士会連合会副会長で司法書士の里村美喜夫さんが話す。
「2024年から、亡くなってから3年以内に不動産登記をしなかった場合、10万円の『過料』が科せられるようになります。すでに今年4月に公布されており、2024年に施行されることになっています」(里村さん・以下同)
まだ2年近く猶予があるように思えるが、準備はいますぐにでも始めるべき。不動産登記には、想像以上に時間と手間がかかるからだ。
「例えば、先祖代々の土地を長年登記していない状態が続いていれば、3代前、4代前の先祖の名義のままになっているはずです。となると、登記されている名義の子孫を一人ひとり辿って連絡を取り、相続人を把握し、権利関係を明らかにしなければなりません。絶縁状態でも、離婚した先妻の子供も相続人になるため、全員に連絡を取るだけでも一苦労です。
あるいは、地方などで坪単価が極端に安い土地を持っている場合。固定資産税の通知が来ないので、知らずに何代も前の先祖の土地を登記せず相続していることもあります」
こうした所有者不明の土地は現在、日本の国土の20%ほどだといわれており、これは九州とほぼ同じ広さにもなる。だが、本当に所有者がわからない土地は、このうちのわずか0.41%だという。
「所有者不明土地のうち7割近くが、相続登記未了のもの。知らずに相続している土地があるかどうかは、調べるとわかることがほとんどです」
固定資産税の通知が来ないような安い土地であっても、法務局に問い合わせて登記簿謄本を取り寄せれば、相続しているか否かわかる。身に覚えのない土地に過料を科せられる前に、まずは確認を。