高額な買い物をすると、つい気が大きくなってしまう人も多いのではないだろうか。50才のときに貯金ゼロ状態を経験した女性セブンの名物記者「オバ記者」こと野原広子さんは、「お金のケタが変わると気持ちがマヒする」と語る。野原さんの体験談をもとに、失敗しない買い物のコツを紹介しよう。
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世間では、「道を究めている」とか「思い込んだら一途なのがいい」などと、凝り性やマニア気質を評価する向きもあるけれど、それもどうかと思う。というのは、私がそうだから。
ギャンブル依存症で、20年間の多くの夜を雀荘で過ごして、お金どころか人生までスッてしまったのはその一例だけど、実はもっと細かくやらかしている。たとえばオペラ鑑賞がそう。
「オペラが好き」と言うと「高尚なご趣味で」と返ってくるけれど、あれもツボにハマると中毒性があるのは麻雀と一緒でね。気がつくと安い飛行機のチケットを買って、ひとり、イタリアの劇場巡りをしたことが数回あるの。
余裕のある暮らしをしているならいいけど、消費者金融に100万円ちょっとの借金がある人間がする遊びではないって。かといって、暮らしぶりがよくなるのを待っていたら、一生こんな遊びはできないから、毎度「ええい、行っちまえ」と飛び出してしまうわけ。でも、そういうときの心理って不思議よね。
普段だったら、1本380円のレンタルビデオを借りるのも高いか安いかと迷うのに、オペラという一線を越えたらそれがない。鑑賞のためだからと、ウン万円もするチケットを迷いなく買っている。実際のところ、値段のケタが違ったら、人はお金に関する感覚がマヒするんだと思う。
知り合いの男性と飲んだとき、「340万円出して、新車に買い替えた」って得意になってたから続きを聞いていたの。そしたら、「プラス10万円でシートを革張りにできるっていうから、そのオプションも利用した」だって。驚いたわよ。だって、その少し前には「事務所のイスが古くなったから買い替えようとしたけど、それなりのものは3万円近くするからやめといた」って言ってたんだから。ま、その人の趣味嗜好と値段は単純に比較できないかもしれないけど、高額の買い物をするときって、そんなものかもしれない。
私の場合、オペラだけじゃない。洋裁に夢中になり、パリまで毎年のように生地を買いに行くって……「バカも休み休みにしろ」とあの頃の私に言いたいわ。
と、その一方、どこかで、「やったもん勝ち」とほくそ笑んでいる私。あ~あ、一生貧乏確定だね。