新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、長期間の時短要請などで打撃を受けていた飲食店にも徐々に活気が戻りつつある。しかしここに来て、経済の回復に水を差しているのが、原油や物流費の高騰などによる世界的な食料価格の値上げだ。国連食糧農業機関(FAO)が発表する世界食料価格指数は右肩上がりで、今年10月は前月比4ポイント高い133.2と、2011年7月以来10年ぶりの高水準となっている。
小麦粉や豚肉など多くの食品の仕入れ価格が高騰し、外食チェーンのロイヤルホールディングスや味の素冷凍食品、牛丼チェーンの吉野家など、大手企業が相次ぎ値上げを発表。当然飲食店への影響も甚大で、コロナ禍から回復に向かおうという時に、追い討ちをかけるように経営を圧迫しているのだ。
しかし、そんな状況の中、あえて“値下げ”に踏み切った飲食店もある。そのひとつが、都内に3店舗を構える餃子店「肉汁水餃子 餃包(ぎょうぱお)」だ。11月16日から、看板メニューの「餃包(4個入り・白湯スープ付)」の価格を1089円から990円(税込)へ10%の値下げを行った。なぜ仕入れ価格が高騰する今、値下げに踏み切ったのか。同店を運営する株式会社アールキューブ代表・坂田健さんに話を聞いた。
「小麦粉や豚肉を扱う餃子が主力商品なので、原材料費の高騰が直撃しているのは間違いありません。しかし当社の場合、自社の工場で原料から製造して販売まで行っているので、原価率を低く抑えられ、実はそれほど苦しい状況ではないんです。また、店舗の立地が六本木、池袋、新宿でもともと商品の価格を高めに設定していたこともあって、価格設定にも余裕がある状況でした。
だったら、クリスマスや忘年会シーズンを控え、せっかくコロナ禍から経済が回復しようとしているタイミングに、あえて値下げを行った方が需要を呼び起こせると考えたんです。原材料費高騰で困っているのは仕入れ業者も同じなので、できる限り企業努力で売上げ向上を目指せば、大量仕入れすることでお互いにとってプラスになります」(坂田さん・以下同)