別掲図は木下氏の指摘する「実効税率」に基づく考え方を整理したものだ。
「たとえば、財産総額6000万円の人で、子供1人が相続人の場合、相続税は310万円。実効税率(相続税/財産総額)は5.2%です。この場合、贈与税の実効税率が4.5%となる200万円の贈与なら得になるけど、6.3%になる300万円の贈与だと損になってしまうわけです」(木下氏)
そうして、最適な額を計算しつつ、それぞれの家庭にとってベストとなる「駆け込み贈与額」を考えていく。
「財産の大部分が不動産(自宅)というケースなどでは、多額の現金を贈与していくと、親の生活資金などがなくなってしまう。そういったことを避けるためにも、資産内容を整理しておくことが重要なのです」(木下氏)
その上で、実際に贈与する手続きに移る。やること自体は非常にシンプルで、親が子らの銀行口座に現金を振り込めばいい。金融機関が年内営業している12月30日までに済ませる。
「振込人の名前や額面が記録として残るので、贈与は銀行振込で行なうべき。重要なのは、贈与を受けた子や孫が自分でその口座を管理していることです。
孫が成人するまで、と考えて祖父が銀行印も通帳も管理し、毎年同じ時期に非課税枠の110万円を振り込んでいるといった場合には、後になって祖父の預金である『名義預金』として扱われ、相続税の課税対象となるケースもあるので注意しましょう」(木下氏)
また、贈与税が発生した場合も、しなかった場合も「贈与契約書」を結ぶのがよいと木下氏は指摘する。
「税務申告では必要ありませんが、税務署の調査などの際に贈与があったと証明しやすくするためにも、金額に関係なく贈与契約書があったほうがいいと考えられます」