別掲図は贈与契約書の書き方の一例だ。一括贈与とみなされないために、毎回、作成するのが望ましい。
「『いつ』『誰が』『誰に』『何を』『どのように』贈与したのかをもれなく記載し、作成した日付を明記する。そのうえで贈与者と受贈者が記名捺印します。未成年者の場合は親権者も記名捺印する。それを2部作成してお互いに手元に残しておくのです。
受贈者が贈与を受けたことを確実に把握していて、そのお金を自由に使える状態にあったと証明できるようにすることが非常に重要です」(木下氏)
不要な口座の解約も
「贈与自体は年内の最後の2日間の“駆け込み”でOKですが、110万円を超える贈与があった場合、翌年の2月1日から3月15日の確定申告の期間内に贈与税の申告書の提出を忘れないようにしましょう」(木下氏)
国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」は、必要事項を入力すれば税額が自動で計算されるので便利だ。
注意したいことは他にもある。
「たとえば、認知症の人からの贈与は成立しません。税務署から、渡すほうが自らの意思で渡したことにならないと指摘されるリスクがあります」(木下氏)
そうして親子で相続、贈与について話し合うことで、「死後の手続き」の手間を省くことにつなげられるケースもある。
「課税遺産総額を試算するために、財産の洗い出しをするなら、せっかくの機会なので、財産の整理を進めてみてはどうでしょう。
ほとんど使っていない銀行口座を解約するなどして、預金はできるだけシンプルな状態にしておいたほうがいい。貸金庫も契約者が亡くなると凍結され、相続人全員の同意がなければ開けることができないので、生前に家族が話し合って対策を取るとよいでしょう」(木下氏)
年末までの相続の総力戦のなかで、やれることはたくさんある。
※週刊ポスト2021年12月17日号