「もしもギターが弾けたなら……」若い頃にそんな憧れを抱いたことがある人は多いのではないだろうか。そうした中、コロナ禍で時間ができたことで、あらためてギターに挑戦しようと思った人もいる。実際、山野楽器が2020年度に販売したアコースティックギター(アコギ)の本数は前年度比190%増で、楽器の中で最も伸びが大きかったという。とはいえ、そんなギター熱の盛り上がりとは裏腹に、せっかく買ったアコギをもう使わなくなったという人たちもいるようで……。
今では「高級インテリア」に
今年の夏ごろ、東京都内の楽器店でアコギを購入したというメーカー勤務の30代男性・Aさんはこう話す。
「高校も大学も楽器街に近かったので、楽器店の前を通る度に、挑戦してみたいと思っていましたが、何も行動できないまま社会人になっていました。アコギの弾き語りが好きなので、いつか自分でもやってみたいという憧れは持ち続けていて、コロナ禍で時間ができたこともあり、念願のギターを購入しました」(Aさん)
Aさんは雑誌やYouTubeなどを見ながら基礎練習に励んだが、長続きせずさっさと挫折してしまった。現在そのギターは“インテリア化”しているという。
「ギター経験者の知り合いが、『何でも基礎は大事。ギターも同じ』と言うので、好きなアーティストの曲のフレーズを弾いてみたかったけど、我慢して基礎練習をすることにしたんです。でも、ある程度自分なりにこなした後にいざ実践と思っても、実際にはまったく曲は弾けるようにならず、つらくなって、ギターに触れる日が減っていきました。
今では、そのギターはウイスキーボトルと一緒に並んでいます。友人が家に来た時、『弾いてみて』と言われたこともありましたが、『チューニングが……』などとそれらしいことを言ってごまかしました。5万円で買った高級インテリアだと思えばいいと、開き直っています」(Aさん)
家族からの冷たい視線
専門商社に勤務する40代男性・Bさんは、在宅勤務の影響から飲み会がなくなり、プライベートの時間が増えたことから、学生時代に好きだったフォークソングを弾いてみたいと思うようになった。実は一度挫折しているため、今回はリベンジでもあった。
「学生時代にアコギの弾き語りで、当時付き合っていた女の子にラブソングを贈るみたいなことがしたくてかじったことがあったんです。それを思い出して、もう一度チャレンジすべくアコギを購入。10万円くらいのものを買いました」(Bさん)