新型コロナウイルスの新規感染者数が落ち着いたことにより、打撃を受けていた日本経済にも回復の兆しが見えてきた。その一方で、足元では原油価格の高騰などにより、世界的なインフレを懸念する声も目立つ。コロナ後の経済はどうなるのか。経済アナリストの森永卓郎氏が分析する。
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原油価格の高騰で、電気やガス、ガソリン代などのエネルギー価格から小麦、牛肉などのコモディティまであらゆるものが値上がりし、企業や市民に影響を及ぼしている。日本銀行が12月10日発表した11月の企業物価指数は前年同月比9%上昇し、1980年12月以来約41年ぶりの伸び率となった。これほどの物価高騰は、原油価格だけが要因ではない。投資家の投機資金によるマネーゲームが横行していることが背景にある。
実際、株価や都市部の不動産、金、さらには暗号資産(仮想通貨)まで、投機対象の資産は軒並み高値となり、バブルの様相を呈している。S&P500の「CAPEレシオ(シラーPER、長期的に見て株価が割高かどうかを判断する指標)」は、一般的に25倍を超えたら警戒水準と言われる中、39倍というとんでもない数字に達している。投機可能な資産が一斉に値上がりするというのは、まさにバブル期の大きな特徴だ。昨今の物価上昇も、こうしたマネーの流れの影響を受けて、実需から乖離した極端な値付けがなされているためとみられる。
だが、実態とあまりにかけ離れたバブル相場は長続きしたためしがなく、私はそろそろ転機が訪れると見ている。そのきっかけの一つとなり得るのが、米国の金融引き締めだろう。米国はこれまで、利上げなどの金融引き締めを先送りにしてきたが、その結果物価や株価は大幅に上昇した。10月の米消費者物価指数は、前年同月比6.8%増と39年ぶりの伸び率だ。
当然、これを放置すれば深刻なインフレになるのは目に見えているため、既に米FRB(連邦準備制度理事会)は利上げも視野に入れてテーパリング(量的緩和縮小)に踏み切った。これを受けて、日本を除く世界の中央銀行も政策金利の引き上げを始めている。だがその一方で、金融引き締め、金利上昇がバブルに終止符を打つことは、過去の例から見ても明らかだ。