かつて国税庁が発表していた「長者番付」は、所得税額1000万円を超える納税者の名簿を公示する制度で、これに基づいて高額納税者の順位が明らかになった。著名人などのランキングも作成されたが、個人情報保護や犯罪抑止などの観点から2005年(2004年分)の発表を最後に長者番付は廃止された。
では、現代の日本の富裕層はどんな人たちなのか。『経済界』編集局長の関慎夫氏がその定義を語る。
「有価証券報告書に記載される1億円以上の報酬があった人が、高額所得者としてよく報じられます。しかしそれはあくまで企業からもらう報酬といういわば“給料”にすぎず、多額の税金もかかります。実質的な資産を推し量るには、保有する『株式』と、その『時価総額』を見るのが世界的な潮流です」
そこで上場企業約4000社の決算書や大株主の情報などを整理する企業価値検索サービス「Ullet(ユーレット)」の協力のもと、上場企業の有価証券報告書から個人の大株主を抽出、保有株の時価総額の上位100人をランキングにした。トップに輝くのは、4.9兆円でソフトバンクグループ社長・孫正義氏。2.4兆円で2位につけたのは、ファーストリテイリング社長・柳井正氏だった。
ランキングを見ていくと、「同じ苗字」が目立つ。ファーストリテイリング・柳井家からは、長男の一海氏(5位)、二男の康治氏(6位)、妻の照代氏(7位)と“身内”がズラリ。「近い将来、息子のどちらかに社長を禅譲するのではないか」ということが関係者の間では話題になっている。
『ユニクロ潜入一年』(文藝春秋刊)の著者でジャーナリストの横田増生氏が2人の“後継者候補”について語る。
「長男の一海氏は米ボストン大学卒業後、ゴールドマンサックスなどに勤務した知米派。真面目で誠実、周りに敵を作らないタイプと言われます。
次男の康治氏は三菱商事時代にイギリス駐在を経験し、兄に比べて派手なタイプとされます。韓流スターやプロサッカー選手と交流があり、イギリス時代には日本から来る同僚に手土産として、日本のゴシップ誌をねだったそうです」