早ければ2030年に気温が1.5℃上昇するという予測もある中、地球温暖化を防ぐにはどうすればよいのか。人類の危機に立ち向かう科学の最前線を追った。
人類は太陽のエネルギーから様々な恩恵を受けているが、人類が主に使っているのは目に見える可視光。例えば一般的に知られている太陽電池は、この可視光を利用したものだ。
しかし、太陽光のうち約44%を占めるのが赤外光だ。波長が長く、人の目には見えないだけでなく、街中ではヒートアイランド現象の一因となり、人体には熱中症を引き起こすという、やっかいな存在だ。
赤外光のエネルギー変換はこれまでも試みられてきたが、効率が低く、実現は不可能と考えられてきた。
この赤外光を使った太陽光発電に挑戦しているのが、京都大学化学研究所准教授の坂本雅典氏だ。
坂本氏がエネルギー変換のための赤外線吸収材として開発したのが、ナノサイズの小さな粒子だ。様々なナノ粒子で試すことで、これまでより格段に高い効率で、赤外光から燃料となる水素を作ることに成功した。今、坂本氏が社会実装に向けて取り組んでいるのが、ナノ粒子を使った透明太陽電池研究である。
「赤外光を効率よくエネルギー変換できれば、人類は太陽からもっと大きな恩恵を得られます」(坂本氏)