田代尚機のチャイナ・リサーチ

東アジア経済圏でRCEP発効 米国の中国孤立化戦略の難易度さらに高まる

中国にとって自由貿易、対外開放は重要施策

 中国の台頭を抑えたい米バイデン政権は中国のハイテク企業に対する禁輸措置を拡大したり、人権問題に絡めた輸入制限を試みようとしている。資本市場へのアクセスの制限を含め、米中デカップリングを進めようとしている。しかし、物品の輸出入統計を見る限り、その効果はほとんどみられない。

 米国側の2021年1~10月累計データを示すと、最大の輸入先は依然として中国で、輸入全体の18%を占めている。その伸び率は全体の21%には及ばないものの、それでも17%増加している。一方、輸出先では、カナダ、メキシコに次ぐ第3位で全体の8%を占めている。その伸び率は全体の23%増を超える27%増となっている。デカップリングどころではない。米中間の貿易構造は堅く結びついたまま、変わらない。政治がいくら圧力をかけても民間の経済交流は弱まらない。

 アップルやテスラを例に出すまでもない。金融では、中国の市場開放策に沿って、大手金融機関の中国進出が加速している。米国をひとくくりにしてみない方がよいだろう。

 最近の習近平政権の政策は、共同富裕の促進、ハイテク企業に対する規制の強化といった“市場の失敗”の修正など、内向きの政策が目立つが、決して自由貿易、対外開放を軽視しているわけではないだろう。重要政策の一つに挙げ続けており、その点において米国とは対照的である。

 バイデン政権が中国を孤立させようとする強硬策は、中国に対して、アジアでの連携強化を加速させている。米国が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から離脱した時点で孤立化戦略は難しくなっていたが、今回RCEPが正式に発効したことで、さらに難易度は上がったのではないだろうか。

 国家の繁栄に繋がる経済的な結びつきは強い。この地域最大の経済大国である中国を核とした東アジア地域の経済一体化は今後、更に進みそうだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。

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