11月10日、米ナスダック市場に新規上場すると、一気に株価が急騰し市場を賑わせた米電気自動車(EV)メーカーのリビアン・オートモーティブ(RIVN。以下、リビアン)。公開価格78ドルに対し初値は106.75ドル、7日後の17日には一時179ドル台の高値を付け、時価総額は一時1500億ドル(約17兆円)を超えた。その後、株価は調整の気配を見せているものの、依然として市場の注目度は高い。
EV業界においては、イーロン・マスクCEO(最高経営責任者)率いるテスラ(TSLA)の躍進が目覚ましい。テスラの株価は右肩上がりの推移でこの2年間で約20倍に膨らみ、時価総額も1兆ドルを突破した。そうした中で、リビアンが上場からほんの数日でGMやフォードの時価総額を凌ぐほどの過熱ぶりを見せたことで、市場では「次のテスラか」と大きな注目を集めている。
そもそも、リビアンとはどんな会社なのか。海外市場に詳しいグローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏が解説する。
「リビアンは、もともとMIT(マサチューセッツ工科大学)で機械工学の博士号を取得したR・J・スカリンジ氏が2009年に創業した新興EV企業です。カリフォルニア州アーバインに本社を置き、既に9100人の従業員をかかえています(2021年10月31日時点)。
フォードやGMがドル箱としていた(かつ競争が激しい)ピックアップトラックや中型SUV(スポーツ用多目的車)をターゲットとし、従来の自動車メーカーのように自動車代理店を通しての販売ではなく、テスラのように直接消費者に販売するスタイルを取っています。まだ生産を開始したばかりですが、アマゾンやフォードが出資していることもあり、非常に注目度の高い新興EVメーカーです」(以下同)
ただ、規模の面ではまだまだ主要メーカーに及ぶところではない。
「確かに同社は、既に5万5000台以上の電動ピックアップトラック『R1T』および中型SUV『R1S』の予約注文を獲得(2021年10月31日時点)しており、株主のアマゾンからも10万台の電動配送トラックの注文を獲得しています。しかし『R1T』は、今年9月に顧客に納入を開始したばかりです。競合のフォードやGMが電動ピックアップトラックの新車種を投入している事を考えると、ほとんど納車実績の無いリビアンの優位性が高いとは言えません」
にもかかわらず、同社がここまで市場で注目されているのはなぜか。
「需給面では、リビアン株に資金が向かいやすい市場環境であったことが大きい。リビアンは、独自で急速充電設備の整備も予定していますが、EV技術を推進するバイデン政権は、先日可決された総額1兆ドル規模のインフラ投資法案の中で、国内のEV充電設備の整備に75億ドルを投じる計画を盛り込みました。これに加えて、世界的な大規模量的金融緩和により市場に溢れたマネーが、テスラを筆頭とするEVメーカーに流れ込んだのだとみられます」