日本の私学の雄といえば、慶應と早稲田。中でも「慶應」は、富裕層の子どもたちが多く集まるというイメージを持つ人もいるかもしれない。実際、都内の高級住宅街に住むママたちの中には、慶應ブランドにプライドを持っている人たちもいるが、その一方で、そことは無縁の生活を送ってきた人たちの中には、憧れと嫉妬が入り混じった複雑な感情を持つ人もいるようだ。もし、そうした価値観が違うママたちがぶつかりあったら、どんな会話になるのか。実際にあった、慶應ブランドをめぐるママ友たちの会話の一例を、富裕層に数多くの人脈を持つライターの高木希美氏がリポートする。
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港区周辺で出会うママさんたちや富裕層の方々と話していると、すぐ会話に出てくるのが「学歴」です。もちろん東京大学や京都大学、海外でいえばMIT(マサチューセッツ工科大学)やハーバードといった名門大の出身者も多いのですが、なんといっても話題にのぼる回数が多いのは「慶應大学」。“親の代から揃って慶應”といった、もともとお金持ちの家で育った出身者が多いことに加え、小学校受験をして入る「慶應幼稚舎」、中学受験の「慶應中等部」、そして日本の高校にあたる「慶應ニューヨーク学院」など、子どもの受験がらみでも話題に出ることが多い学校といえます。
幼稚舎から慶應出身ママの芽里さん(仮名、以下同)は、自分の息子には中学受験を経験させ逞しくなって欲しいと考えています。住まいは広尾駅近くにある港区の高級住宅街。息子さんは港区立の小学校に通っています。
奈美さんは青山学院に初等部(小学校)から通い、自分と同じように2人の子どもを私立の小学校に入れた“私学重視”のママさんです。お子さんは、1人が慶應幼稚舎で、もう1人が有名私立女子校。住まいはやはり高級住宅街として知られる渋谷区・松濤界隈。
2人のつながりは、奈美さんの夫が慶應出身で、芽里さんと同級生だったことでした。
渋谷にある名門学習塾の説明会帰りに、もともと顔見知りだった裕子さんにお茶に誘われ3人でスタバに入ったそうです。裕子さんも現在は都心の高級住宅街に住んでいます。
裕子さんが「2人の息子さんは、同じ学校なんですか?」と聞いてきました。
芽里さんが、「私と奈美さんのご主人が同級生というつながりなんですけど、息子の学校は違うの。奈美さんの息子さんは慶應、うちの息子は港区立なんです」と2人の関係を説明しました。
“同級生つながり”の芽里さんと奈美さんの夫が慶應出身者と聞くと、裕子さんはすかさず「なんでママさんが慶應出てるのに、息子さん慶應幼稚舎行かせないんですかー? もったいないですね~」と問いかけます。
「慶應ね、いい同級生が多くて学校としても大好きなんだけど、うちの主人は海外育ちだから、日本の私学に重きを置かない考えだし、実力主義を大切にしてるから、息子も海外の大学に行かせたいなと思っていて。だから将来的にニューヨーク学院に入れることも選択肢にはあるんですけど、とにかく小さなうちからバンバン競わせようかと思って、まずは中学受験をさせようと思ってるんです」