ただ、実際に大学受験の段階になると、209万人が生まれた年の受験生だっただけに苛烈な受験戦争があり、その後もいわゆる「一流企業」「人気企業」に入る道は極端に狭かった。バブル世代の「1社受ける度に交通費を10万円もらえた」「内定式の拘束のためにハワイに行った」なんて逸話は一切ありませんでした。
こうした状況を経てロスジェネ世代は社会に出たわけですが、結局は、非正規雇用だらけに。「年越し派遣村」に行列を作ったりする人も少なくありませんでした。地方自治体がこの世代を対象に職員募集をするも倍率は600倍だったりして、しかも合格できるのはそこそこそれまで活躍してきた人だったりする。
完全にハシゴを外された世代である我々に、「75歳まで働け!」なんて言われたところで、どうすればよいのでしょうか。
もともと波平さんの姿を見て自分たちの将来を夢想していたけれど、それはもう現実のものにはならないことが分かりました。さて、国はこれからこの世代の人々をどうやってなだめるのでしょうか? もうこの世代の多くは怒りを通り越して諦めの境地に入っているでしょうが、岸田政権も野党も、次の参議院選挙に向けてしっかり対策を練ってもらいたいと思います。お手並み拝見です。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『炎上するバカさせるバカ 負のネット言論史』(小学館新書)。