田園風景も広がる埼玉県鳩山町が「幸福度ランキング」1位になった背景は？
住んでみたい街の理想と現実には、得てして大きな差があるものだ。憧れのあの街は果たして本当に素敵な街なのか？ まったくノーマークだけど、実は住みやすい街は？ 今回は、大東建託が2021年12月に発表した「街の幸福度（自治体）ランキング」（全国版）で1位になった埼玉県鳩山町について、ライターの金子則男氏が解説する。
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近年すっかりおなじみとなった「○○な街ランキング」ですが、大東建託が発表した「街の幸福度（自治体）ランキング」で、埼玉県鳩山町が全国1位を獲得。鳩山町は9月に発表された「首都圏版」でも、東京都中央区、港区、目黒区、武蔵野市、横浜市都筑区や青葉区といった“いかにも”な自治体を押しのけて1位を獲得しており、2冠を達成しました。
鳩山町といっても、全国的な知名度はほとんど無いと思いますので、基本的なことから説明すると、正式な地名は「埼玉県比企郡鳩山町」で、地図で見ると埼玉県のほぼど真ん中。町内ではありませんが、近隣には埼玉県こども動物自然公園、関越道の高坂SA、大東文化大学の東松山キャンパスなどがあります。
鉄道は町内を通っておらず、都心方面に出る場合は、バスに乗って東武東上線の坂戸駅や高坂駅に出ることになります。町内から両駅へはバスで10～20分程度。坂戸から池袋は40分強なので、都内への通勤通学は可能です。一方の道路状況は、関越道の坂戸西スマートICがあり、こちらが便利。すぐ南側に圏央道の鶴ヶ島ジャンクションがあり、東北道や中央道にも行きやすい環境です。
なぜ鉄道も走らない街が1位に？
鳩山町は直線距離で都心から約50km。失礼ながら町内に鉄道も走っていないような街が、なぜ幸福度ランキングで1位になったのか？ 考えられる大きな理由が、鳩山ニュータウン（以下NT）の存在です。NTは1970年代から90年代にかけて開発され、鳩山町民の約半数はNTの住民。整然とした街並みには、100平米を超える敷地を持つ一戸建ての家が立ち並び、メイン通りは無電柱化されていて、環境は抜群です。90年代には分譲価格が1億円を超える物件が登場して話題になったこともありました。
ただ、環境は整っていますが、同時代に出来た他のニュータウンと同じく、住民の減少と高齢化が深刻な問題になっています。ピーク時には1万人以上だったNTの人口は7000人を割りました。すでに開発が終わっているので、新たな住民が増える機会は少なく、不満を抱いている人もNTから出ていっていると思われるので、結果的に幸福度の平均点が高くなったとも考えられます。
さらに、「街の幸福度ランキング」は、非常に幸福だと思う場合を10点、非常に不幸だと思う場合を1点とする10段階で聞き、その平均値を算出したものですが、鳩山町の回答数はわずか「67」。「首都圏版」ランキングで2位以下の自治体とは回答数が2ケタ違うことも（2位の横浜市都筑区は1155人、3位の東京都中央区は1039人）、特殊な値を示した一因だと推測されます。
