免除の申請が承認されると、その期間は、国が国民年金保険料の一部を負担してくれるのだ。「全額免除」の場合、本人が1円も納付せずとも、国が月間保険料の半額となる8300円を払い込みしてくれて、それが将来の年金受給額に反映される。当然、通常の保険料1万6610円を納付したときよりも受給額は減ることになるが、なにしろ自己負担ゼロで保険料の2分の1が受給額に算入されるのだからメリットは計り知れない。
なお、「4分の3免除」とは、本人が保険料の4分の1(実際は4150円)を支払い、国が8分の3を負担すること。「半額免除」は、本人が2分の1(8310円)を支払い、国が4分の1を負担、「4分の1免除」は、本人が4分の3(1万2460円)を支払い、国が8分の1を負担することになる。免除の割合に応じて、国の負担額は変わってくる。
コロナ禍の臨時措置で基準は大幅緩和
さて、肝心の免除の基準だが、さすがに全額免除のハードルは高い。日本年金機構のサイトでは次のように表記されている。
【全額免除】
・前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
つまり、配偶者や扶養家族がいない単身世帯の場合、67万円以下が基準となる。税法上の所得なので、収入から必要経費などを差し引いた金額だが、この基準をクリアする人は多くはないだろう。配偶者など扶養親族が1人いると102万円になるが、そのときは扶養親族の収入も考慮されるので、ハードルの高さはあまり変わらないといえる。なお、全額免除以外の免除の基準については、日本年金機構のサイトで確認して欲しい(失業による免除の基準は別になる点に注意)。
この免除制度のハードルを下げてくれるのが、コロナによる臨時特例措置だ。令和2年(2020年)5月から実施されており、次の2つの要件が設定されている。
【1】新型コロナウイルス感染症の影響による収入の減少
【2】所得が相当程度まで下がった場合
【1】の理由付けは問題がないだろう。重要なのは【2】で、令和2年2月以降の所得の状況からみて、「所得見込額」が保険料免除基準相当になることが見込まれればOK、となっている。所得見込額の算出方法は、令和2年2月以降の“任意”の月における所得額を12か月に換算すればよい。例えば、1か月でも所得が5万円の月があれば、年間の所得は60万円となることが見込まれるため、全額免除の基準をクリアすることになる。実質的に、基準が大幅に緩くなったといっていいだろう。
なお、配偶者がいる場合、その所得も考慮されるが、配偶者の所得が基準をクリアしていれば、当然、配偶者も免除の対象になる。