過去、同業他社は首位を走るスシローに寄せた戦略を取っても成果が出ず、さりとて変化球勝負を挑んでもこれまた結果が出ないと、振り子のように揺れてきたというのが水留氏の見立てだ。
そんななか、2021年7月には業界を揺るがす刑事告訴事件も起きた。かっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイトの田辺公己社長が、はま寿司の社員から日次売り上げのデータを不正に受け取っていたことが発覚。不正競争防止法違反で告訴されたのだ。
それだけ回転寿司業界の攻防が激しいことを映し出す一件とも言えるが、この事件について水留氏は恬淡と語る。
「もちろんやってはいけないことですが、仮に当社の売り上げデータが他社に漏洩したとしても、それで他社の売り上げが上がるわけでもなく、当社の実損もゼロでしょう」
そう話す姿からは、「うちの真似はできない」という絶対の自信が見て取れた。
(第3回につづく)
取材・文/河野圭祐
ジャーナリスト。1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2022年1月28日号