現在、F&LCでは「売上高1兆円、営業利益1000億円」という大きな目標を掲げている。目下スシローの国内店舗数は600店強だが、先々1000店までは視野に入れているという。
一方、海外出店の武器になるのが、買収した飲食チェーンの株式会社「京樽」が持つ80店舗強の「海鮮三崎港」。現在、「回転寿司みさき」という新たなブランドとして順次改装中だが、スシローのような大きな店舗面積が不要な業態のため、海外主要都市に出店していくには回転寿司みさきのほうが店舗物件をより確保しやすいという。
競合他社を見ると、はま寿司を持つゼンショーホールディングス、かっぱ寿司をグループに置くコロワイドでも、寿司業態以外の企業の合併・買収を積極的に進め、両社はいわば外食のデパートといった様相だ。F&LCも今後、寿司以外の業態へも広げていくのか。
「売り上げ数字を大きくするためだけの合併や買収はやりません。キーワードはやはり“和”でしょう。その点、天ぷらはエビをはじめシーフードがメインですし、この業態を海外に持っていって競争力あるフォーマットに仕立てられるのであれば、面白いかもしれません。
いずれにしろ高価格帯ゾーンをやるつもりはないです。それでは大きな店舗数、売り上げのスケールが望めませんし、何より、庶民が日常使いで手軽に食べられる価格で勝負したいですから」
高ぶらず、何時も冷静に語る同氏には、日本の外食企業では未到の「売り上げ1兆円」への明確なロードマップが、すでに出来上がっているのかもしれない。
(了。第1回から読む)
取材・文/河野圭祐
ジャーナリスト。1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2022年1月28日号