その徐董事長が標的になったとあって、台湾企業は震撼した。中国とビジネスで関係していない台湾企業はほとんどないからだ。今後、台湾企業は民進党への献金に二の足を踏むだろう。
つまり、遠東集団へのペナルティは、親中派企業に圧力をかけて見せしめにすることで民進党を兵糧攻めにして独立派勢力を弱体化し、直接対話できる国民党政権を復権させて、台湾を武力侵攻ではなく“香港方式”でなし崩し的に統一しようという“高等戦術”ではないかと私は見ている。
そういう狡猾な独裁者・習近平に日本はどう向き合っていくのか? 今年は9月に日中国交正常化50周年を迎える。「聞く力」があるのはよいが、その結果、迷走しがちな岸田文雄政権の対中政策を注視したい。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2022~23』(プレジデント社)。ほかに小学館新書『稼ぎ続ける力 「定年消滅」時代の新しい仕事論』等、著書多数。
※週刊ポスト2022年1月28日号