今年も受験シーズンが到来。毎年、高校別の難関国立・私大の合格者数が話題になるが、注目されるのは、やはり「東京大学」だ。合格者数ランキング上位には名門進学校がずらりと並ぶが、もちろん進学校に通って東大を目指した生徒全員が合格できるわけではない。なかには「自分は東大合格は無理だ」と思いながらも、親からは「絶対に東大に行け!」と重圧をかけられているケースもあるようだ。かつて東大受験を勧める親に苦しめられた、自称“進学校の落ちこぼれ生徒だった”人たちに話を聞いた。
「みんな東大を受けるのに…」親がつぶやいた世間体
東大合格者数ランキングでは常にトップ10入りする都内の中高一貫校に通っていたAさん(30代・女性)。約7割が医学部に現役合格する学校で、そうでない生徒たちの選択肢は東大を受験するのが「当たり前」だった。
「中学受験で合格し、入学したのですが、私立大学の文系学部を第一志望にする子は珍しいレベルの高校でした。よほどその大学にしかない魅力があるとか、英文学科のような専門的な勉強を最初からやりたいというケースのみ。東大は『進振り』という制度で、3年生になってから専門が決まるため、それが面倒という人がまれにいるんですよね。でも、基本的にはわざわざ東大に行かない理由がないっていう雰囲気がありました。
私の場合、高校2年生の時点で、『自分には東大は無理』だと思っていました。学年順位はおそらく下から一桁レベルの成績だったし、何より東大の二次試験は社会が2教科必要なんです。私は文系でしたが社会が大嫌いで、2教科も勉強するなんて嫌すぎました」(Aさん)
当時、唯一合格圏内にあった国公立大学は東京都立大だったというAさん。大学で何を学ぶか考えた時、社会学や国際関係学、コミュニケーションといった分野に興味があったAさんにとって、「人文社会学」があるのも魅力だった。
「高3になり、模試で書く志望校の欄には都立大のほか、社会学、国際関係・異文化、マスコミ学っぽい学部があるところを選んで記入しました。大学としては京都大学に憧れましたし、社会学部としては国立で一橋大という選択肢もありましたが、私にはいずれもハードルが高すぎて……」(Aさん)
模試が返って来た時、Aさんの記入した志望校を見た親は激怒したという。
「志望校を書くのは実力を測るためでもあるわけだし、何故怒られるのかわかりませんでした。仮に東大に行っても1年生、2年生の前期までの成績をもとに学部が決まる『進振り』は面倒だし、やりたくない勉強はやりたくない、と反抗しても聞く耳を持ってくれませんでした。親の言い分を整理すると、『東大を狙うチャンスがあるのに、わざわざ偏差値を下げたところを第一志望にする意味がわからない』『頭のいい高校に入れた意味がない』という感じでした。