絶好のタイミングだ
東証の市場再編の最大の狙いがプライム市場創設によって「海外投資家」を日本に呼び込むことにあるのは間違いない。
新たな3市場の上場基準とコンセプトは、「プライム市場」は流通株式時価総額100億円以上の企業で社外取締役を3分の1以上選任するなどガバナンスの面でも厳しい条件があり、主に海外の機関投資家向け。「スタンダード市場」は流通株式時価総額10億円以上で国内投資家向け。「グロース市場」は流通株式時価総額5億円以上で投資にはリスクがあるが、高い成長が期待されるベンチャーや新興企業となっている。
武者リサーチ代表の武者陵司氏は、市場再編の影響は大きいと指摘する。
「日本企業全体の業績を見ると、過去30年間の停滞から抜け出し、2022年3月期の企業収益は過去最高水準となりそうです。そのため、安値に据え置かれていた日本株を海外投資家が見直し、日本に投資資金が流入し始めています。ちょうどその時期に合わせたように、東証改革によってプライム市場が創設されるわけで、タイミングは非常に良い」
経済アナリストの馬渕磨理子氏は、日本企業の経営にもいい変化をもたらしたと見る。
「上場区分の見直しは企業側が上場基準をクリアするために経営を見直すいい機会になった。1部上場企業の銘柄の84%がプライムに移行するため、海外の投資を呼び込むにはプライム市場の企業がまだ多すぎるという指摘もあるが、基準を満たすのが難しい企業がプライムに残るには、新たに基準達成に向けた経営計画を提出する必要がある。投資家はその計画書の内容から、これまで以上に投資できる“いい企業”と“そうでない企業”を見分けやすくなります」
「見分けやすい」ことが投資資金を呼び込む重要なポイント。まさに市場再編の狙い通りだ。
※週刊ポスト2022年2月4日号