その区ごとに、様々なイメージを持たれている東京23区。なかでも富裕層が多いイメージがあるのが、23区の中央部である、港、千代田、中央の都心3区。実際、これらの区は、1人あたりの課税対象所得額ランキングでも上位に入っており、ここ30年でさらに富裕層が固定化しているという。『東京23区×格差と階級』の著者で早稲田大学教授の橋本健二さんが言う。
「都心3区は、もともと富裕層が多かった地域ですが、かつては彼らを相手にした商店主や湾岸地域で働く労働者も住んでいました。ところが、ここ30年で富裕層以外はほぼいなくなった。自営業者は高齢化のほか、バブル期に地価が高騰したとき、郊外に移り住んでいきました。
一方、労働者たちは工場の移転に伴って郊外に転居。彼らが住んでいたところにタワーマンションが建って、さらに新しい富裕層がどんどん入ってくる。結果、お金持ちばかりの街になっていきました」
そこにはお金持ちの“見栄”も関係していると橋本さんはみる。「お住まいはどちらですか?」と聞かれて「ああ、港区です」と答えるために都心に住んでいる人も多いというのだ。
「富裕層にとって、住所は豊かさを証明するためのひとつの記号でもあります。そして、彼らが好む住所は時代を追うごとに拡大しているのです」(橋本さん)
港区の平均所得は23区で最も高く1217万円。最下位である足立区の347万円の約3.5倍である。まさに高すぎる水準を保っている港区の所得だが、ほかの区と比べると乱高下しているという。東京23区研究所所長で都市開発コンサルタントの池田利道さんが語る。
「港区の所得の上下は、株価の動きとほぼ一致しています。つまり、港区の所得は、給与所得に株式所得をはじめとした資産所得を乗せた2階建てになっているということ。株価が高水準を維持しているいま、港区のお金持ちたちの収入はさらに上がっているのでしょう。金融緩和によって都心のマンション価格が異常に値上がりしているいま、地域の格差はますます拡大していくのではないでしょうか」(池田さん)