メガバンクの新社長に就任した兄と、政権の中枢に入り込んだ弟。期せずして財界、政界両方の「キーマン」となった兄弟が、日本経済浮沈のカギを握る──。【全3回の第3回。第1回 第2回を読む】
みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)の新社長に木原正裕・同社執行役兼みずほ銀行常務が“2階級特進”で就任することが決まった。平成入行組の56歳とメガバンクのトップとしては異例の若さで、相次ぐ大規模システム障害で信用が傷ついたみずほの再建を担う。
実は、正裕氏の実弟は岸田文雄・首相の「懐刀」と呼ばれ、政界で注目を集めている木原誠二・官房副長官(51)だ。
弟・誠二氏は武蔵中学・高校から東大法学部に進み、高校・大学はテニスに打ち込んだ。テニスサークルでキャプテンを務め、大学選抜ダブルス3位の実績がある。大学卒業後は旧大蔵省(財務省)に入省。いったんは「銀行を監督する側」の道を選んだが、小泉内閣の郵政選挙(2005年)で自民党から初当選する。いわゆる「小泉チルドレン」の1人だ。
みずほの再建にあたる兄・正裕氏にとって、財務官僚出身で金融政策に通じ、政権中枢にいる弟は本来なら心強い存在のように思えるが、そのことが逆に“足枷”となっている。正裕氏の社長就任がいわば“弟の七光り”という見方があるからだ。
1月17日のみずほFGの記者会見でもその質問が出た。みずほ側は、「選任の時に弟が政治家ということは考えていない」(社外取締役の甲斐中辰夫・指名委員長)と否定したが、ベテラン金融ジャーナリスト・浪川攻氏はこう指摘する。
「『弟が官房副長官だから社長に指名されたのではないか』という見方をみずほ側は完全否定していますが、事実でなくても、政治というのは何でも材料にします。兄弟の関係を取り上げ、『みずほは政権に近い』と色眼鏡で見られるでしょう。木原さんにとって弟の存在はプラスではなくマイナス要因になると私は見ています」
だが、そうした色眼鏡は木原兄弟の関係を見誤っている。正裕氏はむしろバンカーとして誠二氏と距離を置き、その政治力に頼らないようにしてきたからだ。