上司が部下に助言や指導をすることはビジネスシーンでよくある光景だが、良かれと思って指導したことが、裏目に出てしまうこともある。相手のためを思って教育、指導したつもりだったが、その後、部下が欠勤、最悪退職してしまったら……。若手社員との接し方に悩んだ末に、「何も言えなくなってしまった」上司たちの思い、そして若手社員側の本音とは──。
良かれと思った指導が“パワハラ”扱い
メーカーに勤務する40代男性・Aさんは、職場の20代男性部下の“言い訳グセ”に悩まされていた。失敗した時には特にその傾向が顕著になるので、誰かがしっかりと言ってあげる必要があると感じていた。
「ミスをしたら謝るには謝るのですが、『○○だったらうまくいった』『××のせいでうまくいかなかった』と一言余計というか……。決して仕事ができない子ではなかったので、もったいないと思っていました」(Aさん)
常々そう感じていたAさんは、部下が資料作成で以前と似たようなミスをしたので、個別に呼び出し、言い訳の件について指導にすることにした。
「『すみません』と謝ったら、次回は失敗しないためにどうすればいいか考えて、自分なりに試行錯誤することも大切だという趣旨を伝えました。ミス自体は悪いことではなく、成長の糧にしてほしいということも語りました。言い訳ばかりではいつまでも成長できない。ミスが許される若手のうちがチャンスだと説きました」(Aさん)
だが、良かれと思って指摘したことが、部下にとっては“パワハラ”に映ってしまったのか、3か月後に退社してしまったという。
「その部下と仲が良かった人と飲みに行く機会がありました。彼についての話が出たので、当時どう思っていたのか聞いてみると、『パワハラを受けたと言って落ち込んでいた』と言うのです。この一件以来、部下のことを思って発言することが怖くなり、他の部下にもあまり強く言えなくなりました。かといってヘラヘラ笑って褒めるのも何か違う。若手社員との付き合いが難しいことを痛感します」(Aさん)