家族の一員としてかけがえのない存在であるペット。その愛くるしさが癒しとなっている人も多いだろう。しかし、いつも一緒にいたいと思っていても、仕事や旅行などの都合で、誰かに預けなくてはならない場合も出てくる。では、たとえば友人にペットの世話を頼まれた側はどのような思いなのだろうか。誰もが依頼を快諾してくれるわけではない。友人にペットの世話を頼まれたが、熟慮の末に断ったという女性の話からは、飼い主とそうでない人との感情の温度差も垣間見える。
都内のIT企業に勤務する一人暮らしの30代女性・Aさん。在宅勤務でどこでも働ける、いわゆるテレワーカーの一人だ。ある日、学生時代からの友人女性に、自分の飼っている2匹の猫の世話を見てほしいと頼まれた。
「2泊3日の出張が決まったので、猫の面倒を見てほしいというのです。正直、びっくりしました。彼女から久しぶりの連絡があったこともそうですし、私はペットを飼ったことがなく、なんなら猫は少し苦手なので……」(Aさん、以下同)
突然の依頼に困惑してしまったAさんだが、家族や親戚に預かってもらうか、それが無理そうなら、ペットホテルに預ける、ペットシッターに自宅に訪問して世話をしてもらうといった方法もある。そう提案したが、それぞれの理由とともに却下されてしまった。
「家族は比較的そばに住んでいるが、最近折り合いが悪いので難しい。親戚は近くにいない。ペットホテルは1泊数千円と料金が高く、また混んでいて預けられない場合もあるし、お迎えに行くのも大変だというのです。ペットシッターはお金がかかる。
ただそのなかで、彼女が一番主張したかったことは、猫という生き物は環境が変わることが一番のストレスになるから、可能な限り自宅で世話をしたいということでした。だから、私に毎日家まで来てもらってお世話をしてほしいと。素人考えでは、プロのペットホテルでお世話してもらうのが一番安心なのでは、と思ったんですが、彼女の場合、そうじゃないんです。世話をする人も、全然知らない人だと自分が信用できないし怖いから、友人である私に頼みたいとのことでした」(Aさん)
友人の言うことに理解できる部分もあったが、いくらテレワーカーで、仕事のスケジュールを調整しやすいとはいえ、自宅からわざわざ電車で片道40分かかる友人宅に通うのも、気が重かった。