「持ち家か、賃貸か」論争は高度経済成長の終焉以降、人々の耳目を集める話題ではあったが、結局、バブルとその崩壊、現在に至るまでその経過を見ても、結論が出たとは言い難い。住まいの認識には、個人の価値観、人生観が反映されるためだろう。
とりわけ東京で暮らす地方出身者にとっては、自宅を買うことはその地にしっかりと根を下ろすことであり、故郷を離れて人生の大半の時期をそこで送ることを、自ら覚悟することにもなる。金銭的な損得勘定だけでは推し量れない価値が持ち家にはあるのだ。
そんな思い出の詰まった自宅だからこそ、いざ売却するときには納得して売りたいもの。「マネーポスト不動産売却」が、居住用不動産の売却を検討したことがある全国30歳以上の男女550人(マンション286人、戸建て274人、土地176人。複数回答可、以下同)にアンケートを行ったところ、「売却して後悔したこと」について、売却を経験した414人から回答を得た。
それによると最も多かったのは「不動産会社をもっと比較・選定するべきだった」(136人、32.9%)、2位は「売却価格を下げすぎた」(103人、24.9%)、3位は「情報収集が足りなかった」(76人、18.4%)、4位は「スケジュールの余裕がなかった」(65人、15.7%)となった(「後悔したことはない」は165人、39.9%)。
後悔のない、満足できる売却、納得できる売却のためには、なんといっても売却価格の要素が大きいわけだが、自宅の価格を維持するために普段からできることはどんなことがあるだろうか。
不動産コンサルタントで新刊『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』が話題の長嶋修さんは「リフォームなど家のメンテナンスをすることがまず基本。考慮するべきなのは今後、建築資材・部材の価格が高騰すること」という。
「木材やコンクリート、給湯器などの設備も業者の仕入れ値が5~15%ほど値上がりし始めています。その要因はさまざまで、海外から資材を輸入するためのコンテナ船が確保できないとか、原油価格の高騰、給湯器でいうと半導体が不足しているといったことがあります。
当分は業者が値上げ分を吸収してがんばりますが、それにも限界がありますので、価格転嫁が徐々に始まっていくでしょう。もしリフォームの予定があるのなら、価格が維持されている今のうちにやってしまうのがいいかもしれません」(長嶋さん、以下同)