すると次男は、「『一生の仕事としてならいい』っていう考え方がもう古くない?」と言い、「美容師だって、案外辞めていく人多いっていうよ。僕だって別にずっとYouTuberって決めてるわけでもない。映像クリエイターとか、専門学校で学んだことは他にも活かせるはずだし、なんで『今やりたいこと』『やりたくないこと』だけじゃダメなのか」などと反論したという。Aさんはなるほどと思いつつ、ダメ押しで大学でも映像系の勉強ができることを伝えてみた。
「『別にあなたのやりたいことを否定したいわけでは全くない』としたうえで、『学校を卒業したらずっと社会人として生きていくのだから、社会人の先輩である大人の意見は広く聞いてみたほうがいい』と伝え、『専門学校には何歳でも入れるし、いろんな年齢の人がいるでしょう。でも、特にあなたの場合、大学受験は絶対に高校を卒業するタイミングでしかしない。だったら一旦チャレンジしてみなさい』と言いました。
正直、次男の気持ちもわかるんです。私が今10代や20代だったら、YouTuberとかやってみたいって思うかもしれないので。でも、次男の場合、本気でYouTuberとしてバンバン稼いでいきたいというよりは、一部の稼いでいる人たちを見て“ちょっといいな~”程度の感じだと思うんです。そんな気持ちで稼げるわけもないし、だったら保険を持っておいたほうがいい、という親心です」(Aさん)
最終的に次男は、Aさんの意見を聞き入れ、大学受験にチャレンジ。現在は芸術学部に通っているという。
「父親に目を覚まさせてもらった」
高校卒業と同時に専門学校への進学を希望するも、親に断固反対されたという子ども側の意見も聞いてみよう。IT企業で働く女性・Bさん(20代)は、高校生時、将来大好きな漫画やアニメに関する仕事に就きたいと思い、卒業したら専門学校に入りたいと両親に言ってみた。すると返って来た言葉は厳しいものだった。
「通っていた高校が、全員大学に進学するような進学校で、大学に行かないのはあり得ない感じだったので、まず唖然とされました。そのうえで、父からは『大学なら学費を出してやるが、専門学校に行きたいなら、自分で稼いだ金で行け。本当に覚悟があるなら、そうしてまでも行きたいはずだ』と言われました」(Bさん)
父親のその言葉に、Bさんは「あっさり白旗を上げました」と恥ずかし気に振り返る。
「ごもっともで、私には無理だなと。だったら親のお金で大学に行って、4年間モラトリアムを過ごそうとすぐに考えをシフトチェンジ。同時に、『ああ、私の本気度ってそんなもんなんだ』と痛感しました。だって、本気だったら高校生活の間だって自力で描き続けて何かの賞に応募するとか、努力できることはいくらでもあるわけじゃないですか。実際、小学校時代からの友人は、高校生の時に声優の養成所に通って、今やちゃんと声優として活躍しています。
私は覚悟もないのに、専門学校に行けば、それだけで憧れの職業につけると思い込んでいました。大きな誤解ですよね」(Bさん)