こうした例外的な場合ではないという前提で考えると、隣家からの落雪が原因でテラスの屋根が壊れて被害を受ければ、その損害の賠償を請求できます。
ただし、警察問題になるかは疑問です。被害はテラスの屋根ですから、建物損壊の罪の成否が問題になりますが、その際のポイントは、故意犯か否かです。つまり、壊れることを知っていながら物を損壊することが犯罪成立の要件となります。
屋根から滑り落ちた落雪がテラスの屋根を壊すことは、隣人自らが行動して行ったことではありません。仮に落雪を予想していれば、実現可能な防止策を講じなかったことが過失になる可能性はありますが、雪が積もる前に雪止めを設置しなかったことで屋根を壊したとまではいえません。誰かにけがをさせれば別ですが、過失による建物損壊は犯罪にはなりません。
落雪被害の心配があれば、老朽化していたから壊れたなどと言われないよう、現状を調査して問題がないことを確認しておき、落雪事故が起きたときに降雪状況などの気象記録や損壊状態を記録し、賠償請求の資料にする必要があります。
また、責任の有無が争いになる可能性もあるので、大切な物を置かないなどの自衛策も講じておきましょう。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座、B型。
※女性セブン2022年2月10日号