今年の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)は、追試験と再試験も含めて、すべての日程が終了した。1月15日・16日に行われた本試験では、問題用紙を写した画像が流出する騒動が起こり、世間に大きな衝撃を与えた。その後、19歳の女子大学生が、自分が画像を流出させたことを認めて警察に出頭、「試験監督の目を盗んで、上着の袖にスマートフォンを隠し、問題用紙を撮影して、スカイプ(インターネット通話アプリ)を使いメッセージを送った」と説明しているという。
ここ数年、デジタル機器の進化に伴い、カンニングのやり方が巧妙化しているが、その一方で試験監督側の対応はどうなっているのか。今回の共通テストで試験監督を担当した大学教員たちに話を聞いたところ、デジタル対応以外にも様々な問題が浮上していることがわかった。
試験監督は現場で何をしているのか?
共通テストの某会場で試験監督を担当した私立大学教員のAさん(教授・40代男性)は、現場の運営状況についてこう語る。
「共通テストの試験監督やタイムキーパーは、基本的にその会場となる大学の教授や准教授らから選出されることになっています。私は今年、2日目の科目(理科1、数学1、数学2、理科2)の試験監督をフルで担当しました。共通テストは、私たちにとっても決してミスが許されない、非常に緊迫した空間です。特に、今年は東大前での刺傷事件があったため、より緊張感がありましたね。
入試担当に選出された教員は、事前に共通テストに関する説明会に参加し、監督上の注意事項や、さまざまな問題が生じた際の対処法などついて指導を受けます。たとえば、英語試験のある1日目の試験会場で英単語や英文が書いてあるような服を着てきた学生がいた場合、服を裏返しにさせるなどして対応します。また嘔吐した学生がいた場合、嘔吐の量や学生の状況などを含め、細かく対応方法が指定されていました」(Aさん)
具体的に試験監督はどのような業務を行なうのか。Aさんは続ける。
「監督は教壇に立ち、受験生に向けてすべての指示を出す役割です。事前に、テレビ番組の台本のような分厚い監督要領が配布されており、そこに進行方法やセリフが書き込まれている。一言一句間違えないように伝えねばなりません。
そのため、タイムキーパーは別の教員が行い、監督が正しくセリフを言ったか、時間どおりに進行できているのか、という点をチェックしていきます。大学教員側は非常に厳格な体制で臨んでいると思いますよ」(Aさん)