受験生の苦情増加で「巡回しづらい」
では、こうした厳格な体制が敷かれているなかで、なぜ女子学生は今回のようなカンニング行為を行なうことができたのか。
その背景には、コロナ禍による環境変化も影響しているのではないかと分析するのは、大学教員Bさん(准教授・30代女性)だ。
「私は1日目、2日目、両日でサブチーフ(タイムキーパー)を担当しました。コロナ禍ということもあり、受験生には『鼻までしっかりと覆うようにマスクを着用してください』とアナウンスをします。受験生は暖房で乾燥した部屋の中、息苦しかったと思いますよ。
試験監督は受験票の顔写真と本人が同一人物であるか、手元の写真票と照合しながら、ひとりずつ確認して回ります。正直、マスクを外してくださいとは言いづらく、“なんとなく確認した”という監督も多いのが実態でしょう。
マスクで顔のほとんどを隠しているため、受験生の表情などはほぼ読み取れませんでした。それが気を大きくさせてしまい、カンニング行為を助長する側面があったのではないか。また髪の毛が長い学生などは、下を向いていれば髪の毛で手元と問題用紙はほぼ見えません。私が担当した教室は400人以上を収容できる大教室でしたから、スマホを袖に隠し持っていた学生が一人いても、見つけるのは困難だったでしょう」(Bさん)
その一方で、「ここ最近は受験生からの苦情が増加しており、試験時間中の巡回がしづらい面もある」と語るのは、マンモス大学として知られる某私立大学で試験監督を担当したCさん(助教・30代男性)だ。
「事前の説明会で、『近年、受験生からの苦情が増えている』という説明を受けました。具体的には、『巡回する試験監督の靴音がうるさい』『体臭や香水の匂いがする』といったものです。そのため、上司から『受験生にストレスをかけないように、試験時間中の巡回は最低限にするように』『あまり、問題を解いている手元などは覗き込んだりしないであげて』と指示を受けました。このように、受験生側からのクレーム対応という面でも、カンニングを見抜くことが難しくなっている面もあると実感します。デジタル機器の進化と合わせて、年々対応しにくくなっていますね」(Cさん)