試験監督を担当する高齢の教授の体力的な問題
さらに、試験会場となる大学の教員だけでは、試験監督業務がうまく回らない現状もある。私立大学で20年教員を務めているDさん(50代男性)は、共通テストの運営体制が変化しつつあるという。
「以前はテスト運営をほぼすべて教授陣が担っていましたが、やはり教員だけで回すのは厳しい面もあるというのが本音です。共通テストの時期は、ちょうど学期末テストの時期に突入し、また学部と大学院の入試業務だけでなく、修士論文や博士論文の審査会などの準備もある。大学教員にとっては、1年の間でも最も忙しい時期ではないでしょうか。
そのため、ここ数年は入試課などの職員を共通テスト専門スタッフとして導入する大学も増えているようです。私が担当した教室は、試験監督を教授が、タイムキーパーを准教授が担当し、問題の配布や受験票の確認、教室内の巡回などは入試業務をおこなう部署の職員が担当しました。
実際、高齢の教授が試験監督をすると、本を読んで監督業務をおろそかにしたり、また居眠りしてしまうこともあると聞いています。実際に受験生から『試験監督が本を持ち込んで読んでいた、しっかり監督してほしい』といったクレームが来たこともあります。
とはいえ、70歳近い高齢の教授陣が朝から18時頃まで、集中力と緊張感を保って監督をするのは体力的にも厳しいですよ。問題流出などを防ぐためにも、専門のスタッフを配置する必要があると思います」(Dさん)
今回の試験問題流出騒動に限った話ではなく、カンニングの方法がどんどん巧妙化していく中で、試験監督側が従来と同じやり方を続けていては、その対策もますます難しくなるだろう。今回の事件を機に、あらためて運営のあり方を見直す必要があるのではないだろうか。