「小泉内閣以降の新自由主義的政策は、我が国の経済に成長をもたらす一方で、持てる者と持たざる者の格差が広がりました。成長だけでは人は幸せになれません。成長の果実が適切に分配されることが大事です」
岸田文雄氏は総裁選でそう演説し、首相に就任すると所得の再分配を重視する「新しい資本主義」を掲げ、カーボンニュートラル(脱炭素)をはじめ半導体産業の再生やAI(人工知能)分野などの経済安全保障、大学ファンドによる研究者育成など財政支出55兆円というコロナ経済対策を打ち出した。この巨額の対策が各産業分野で成長の起爆剤になると期待されている。
経済ジャーナリスト・森岡英樹氏はカーボンニュートラルの金融市場へのインパクトに注目する。
「脱炭素というと太陽光や風力発電のような自然エネルギー開発やEV(電気自動車)が中心と思われがちだが、真っ先に潤うのは証券会社など金融市場です。企業が脱炭素を進めるためには資金が必要で、すでに製鉄会社が『環境債』を発行する動きが始まっている。世界には企業の環境分野などへの取り組みに投資するESG投資資金が3000兆円あるとされ、政府もそれを日本に呼び込むために東京を脱炭素分野の金融拠点にしようとしている」
大企業はすでに投資を活発化させている。
「AIならソフトバンク系のZホールディングス、東大と次世代AI都市シミュレーター研究をやっている小田急電鉄、金融機関向けのAIを出している日本ユニシス。宇宙分野ではロケット開発に乗り出すホンダなどが投資の拡大に積極的です」(同前)