ドラマや映画は、倍速視聴で感動が薄れる
たしかに、再生速度が速くなれば、動画を効率よく視聴できるかもしれない。だが、果たして内容をきちんと理解できているのだろうか。ドラマや映画といった作品を本当に楽しめているのだろうか。「加藤プラチナクリニック」院長の加藤俊徳さんは、脳のスペシャリストとしての立場から倍速視聴は目的によって使い分けるべきだという。
脳はさまざまな機能を分担する「脳番地」に分かれて働いているが、言葉を聞き取る「聴覚系脳番地」と、物事や言葉を理解するのに関係する「理解系脳番地」の働きが倍速再生についていけない可能性があるという。
「特に音読が苦手な子供たちや、聴力が衰えてきた高齢者は、早口だと聴き取れずに理解がついていかない。集中して視聴しているように思っても、理解がスベっている可能性が非常に高い。だから、倍速視聴で見たものは納得感が半減し、聴いた言葉や内容を忘れてしまうのです」(加藤さん・以下同)
脳に入った情報を早く処理しようとすると、結果だけが短絡的に結びつくようになる。いわば、AからBという結果に至るまでの過程を飛ばしてショートカットするようなもの。倍速視聴の場合も、脳でショートカット処理がされるため、味わいや感動が減ってしまうというのだ。
「じっくりと考えて咀嚼しようとする場合、倍速視聴は有効ではない。何でもかんでも時短のために倍速視聴をしていたら、脳がうまく働かなくなってしまう。動画なので視覚系脳番地への刺激も上スベりしてしまう。さらに、内容の理解が浅くなるから、記憶としての定着度も下がる。脳には“見た”という事実しか残っていないことも多い」