密を避けられることから、コロナ禍の移動手段として需要が高まっているカーシェアリング。車を所有することなく、必要な時だけ利用できる便利さも人気の理由だが、利用者の増加に伴いトラブルも起きているという。もし、心当たりのない車の傷の修理代を請求されたらどうすれば良いか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
先日、個人間カーシェアリングを利用しました。返却した1週間後にオーナーから「車に擦り傷があったので修理代を払って」と連絡がきました。私は運転中にぶつけたり、傷をつけた覚えはありません。返却時に車の写真を撮っておいたものの、それでは傷の有無ははっきりわかりません。私の後に借りた人はいないとのことですが、身に覚えがないのに修理代を支払わないといけないのでしょうか。(東京都・39才・会社員)
【回答】
実際に車に傷があれば、あなたは不利な立場になります。あなたが利用したカーシェアリングは、利用料を支払うので自動車の賃貸借です。車を返す際に、借主は借りたときの原状に回復して返却する必要があります。原状と違っていれば原状回復義務が生じ、元通りにして返却する必要があり、修繕費用を負担しなければなりません。
あなたは、返すときに傷がなかったというくらいですから、借りたときにも傷には気づかなかったはずです。つまり、傷がついた状態で車を借りたとは言えません。そうすると、返すときには、原状である傷がついていない状態で返却する義務があります。
とはいえ、返したときにオーナーが何も言わず、1週間後に修理代を請求してきた点を問題にしたいところです。車を返したときに立ち会って点検したとすれば見落とすことはないし、見落とすような傷であれば、借りた最初のときからついていた可能性もあります。その場合は、あなたは借りた原状で返したことになるので、何ら原状回復義務に違反していないことになります。