中学受験を描いた漫画『二月の勝者』がドラマ化され話題を呼んだが、現実に合格を勝ち取るには家族の支えが欠かせない。中学受験の最新トレンドと受験生の父親の戦いを追った──。
「どうしても出社しなければいけなかったので、1月下旬から2週間以上ビジネスホテルに泊まって1人で隔離生活をしていました。もし自分がコロナに感染したり濃厚接触者になったりしたら、娘の3年間の努力が水の泡ですからね」
そう話すのは、今年、小学6年生の娘を中学受験させた都内在住の40代男性・Aさんだ。
首都圏の中学受験は1月10日に始まり、2月1日には「御三家」と呼ばれる超難関校や有名私大付属中学などの入試が集中する。麻布・武蔵とともに男子御三家で知られる開成中学・高校は40年連続東京大学合格者数トップに君臨し、昨年度は1学年400人のうち144人(浪人含む)が東大に合格している。
「例年、1月になると本番に備えて学校を休む生徒が増えるそうですが、今年はオミクロン株を警戒して受験生の9割以上が休んでいると聞いています。娘の小学校は中学受験生が多いので、クラスの半数以上が休んでいます。1月受験校は感染したり、濃厚接触者になると再受験できるところも多いですが、2月1日の本命校は追試がないところがほとんど。つまり、感染したら即不合格ということです」(Aさん)
小学4年生から塾通いを始めたAさんの娘も、1月からは自宅で塾のオンライン授業を受け、一歩も外出することなく、当日に備えたという。
例年以上に緊張感が高まった今年の中学受験。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は、コロナの影響で受験競争そのものがさらに苛烈になっていると分析する。
「全私立の定員数に受験者数が追いついたのは2019年のことで、一部の中学に受験者が集中する一方、定員割れの学校も少なくなかったんです。ところが2021年の中学入試では受験者数が14年ぶりに5万人の大台を超えました。背景にはコロナのような有事の際に、公立では柔軟な対応ができないという保護者の不安があるとみています」