毎年発表される「小学生がなりたい職業ランキング」は時代を映す鏡。近年はYouTuberが上位にランクインすることが話題になっているが、いつの時代にも「将来、その仕事に就けたらいいなあ」と想像する憧れの職業は存在するもの。とはいえ、せっかく憧れの職業に就くことができたにもかかわらず、その後、「自分には無理だった……」と感じて辞めてしまう人もいる。思い描いていた理想と現実のギャップに戸惑った経験を持つ人たちに話を聞いた。
花屋「体力的に辛いことは覚悟していた」
現在は携帯電話ショップで働くUさん(30代/女性)は子供の頃、花屋さんに憧れていた。母親が花好きで、家の玄関やリビングには常に花が飾られている環境で育ち、高校を卒業すると念願の花屋で働き始めた。だが、仕事内容は想像以上にハードだった。
「仕事は早朝から始まります。夜も明けないうちに花の仕入れに行き、店に戻ったら葉っぱ、トゲ、茎などを取りますが、その作業で手は傷だらけ。水をたくさん使うので手は荒れますし、樹液などで手がかぶれることもあります。植木鉢や花瓶を運んだりする力仕事も多く、小柄で力の無い私は周りに迷惑をかけてばかりでした。基本的にずっと立ち仕事で、重いものを持ち上げることが多いので、腰を悪くする人も多いです」(Uさん)
キレイな花に囲まれ、可愛らしいエプロンをつけて花束を作る姿に憧れていたUさん。笑顔の陰には辛い作業があることを知っても心が折れることはなかったが、どうしても慣れることが出来なかったのが「虫」だ。
「花屋で働き始める前、体力的に大変だということは聞かされていたんです。『朝は早いし、店内で暖房は使えないし、冬でも冷たい水での作業だし、夜も遅いよ』と。そこは覚悟していましたが、虫のことはまったく頭にありませんでした。
作業しているとナメクジ、毛虫、ムカデ、カタツムリ、アブラムシ、芋虫、蚊など、とにかくさまざまな虫に遭遇します。実は私は、虫が大の苦手。最初はキャーキャー言っている私を周囲は笑って見ていましたが、いつまで経っても虫に慣れない私は『(花屋に)向いてないよ』と言われ、挫折してしまいました」(Uさん)