約800万人の団塊世代が後期高齢者となる2025年。超超高齢社会を迎える日本において、問題視されているのが死亡者数の増加だ。いわゆる「多死社会」で何が起きるのか──。
すでに表面化しつつあるのが、「火葬場不足」の問題だ。長く火葬場運営会社に勤め、現在は火葬場コンサルタントとして活動する川田明氏の話。
「東京都23区内には99基の火葬炉があり、概算すると年間9.6万人の火葬をしています。火葬炉1基あたり1日2.6人の火葬を行なっている計算になりますが、正月三が日や故障・メンテナンス等で稼働しない日があることを考えると、現実に火葬炉1基に振り分けられる火葬作業はもっと多い。現在も、ギリギリで何とかこなしている状況です」
なぜ、東京23区をはじめ都市部でこのような事態が生じているのか。
「1日の火葬炉の稼働数を左右するのが、火葬場の操業時間や一般的な葬送スケジュールです。午前中に葬儀を終え、お昼以降に火葬する日程が好まれるため、どうしてもこの時間に火葬の作業が集中してしまう。また、葬儀は友引を避ける傾向があるため、火葬炉の稼働時間はさらに限定されてしまいます」(川田氏)
需要に応じて火葬場を増やせば済む、という問題でもない。特に都市部では火葬場を新設したくても周辺住民の理解が得られないケースが多く、行政側も及び腰だという。
「燃料に都市ガスや石油を使う火葬場では、今後、CO2など温暖化ガスの排出問題も絡んできます。温暖化ガスの排出を減らすような技術開発が求められる時代になる可能性があり、新設しようにも、そうした環境問題への対応が足枷になることも考えられます。火葬場の稼働がさらに逼迫すれば、何週間も待たされる事態になってもおかしくありません」(川田氏)
順番待ちが長引くほど、遺体の安置場所が問題になってくる。死亡した後、火葬までは葬祭場や葬儀社の霊安室に安置されるのが一般的だが、10日以上ともなれば、空きがないことも考えられる。その場合、どうなるのか。
「冷蔵設備を備えた霊安室を持つ葬祭場や葬儀社は限られています。そうした設備を持たない中小の葬儀社では、夏場でもドライアイスを詰めてご遺体を保存するケースが少なくありません」(川田氏)