昨年、大阪では、遺体安置所を確保できない葬儀業者が民泊業者の施設(一軒家)に遺体の一時保管を依頼し、問題化した。近隣住民からの相談で行政側が対応したが、法制上、一時的な遺体安置に規制がない自治体がほとんどなのが実情だという。
混雑する都市部での火葬を避け、近年は地方の空いている火葬場を利用する動きも見られる。北陸地方のある葬祭場では、地元出身者が首都圏で亡くなった場合、故郷での火葬を受け入れる取り組みを始めているという。
ただ、遺体を運ぶための棺の搬送費用や、葬儀に参列する親族らの交通費が必要になることを考慮すると、利用のハードルは高そうだ。
さらに問題は、火葬場や安置所の不足だけにとどまらない。
「渋滞するのは火葬場だけではありません。多死社会が進めば、通夜や告別式を執り行なう葬儀場が空くまで待たされるケースや、お経をあげるお坊さんの日程の都合で待たされるケースも出てくるでしょう。この先は、葬儀ができるまでに待たされ、さらに火葬場の順番待ちを余儀なくされるようになるはずです」(川田氏)
都市部では葬儀をせず火葬する「直葬」が増えているが、それさえ困難になる日が近づいている。
※週刊ポスト2022年3月4日号