高齢化に伴い、がんや高血圧、脳卒中、糖尿病などの患者が増えているが、その傾向にも拍車がかかりそうだ。厚労省の「患者調査」をもとにした疾病構造推計によると、2025年に短期入院患者数は1.7倍(2010年比)、慢性期入院患者数は2.5倍(同)に膨れ上がるとされる。
医療の逼迫が確実視されるなか、国は「病院から自宅へ」の号令をかけているが、病院で生涯を終える患者は全体の約8割を超える現実がある。岩間院長は、こうした状況がこれから大きく変わる可能性があると見る。
「今後は、病院の人手不足のために入院できず、医療依存度の高い高齢者が自宅や施設に押し出されることになります。病院では、認知症などで意思疎通が難しい患者さんは十分な治療を受けられない可能性があります。そうなると、しわ寄せは介護職員に向かってくる。すると今度は、『医療依存度の高い人は入居させない』という介護施設が増えると予想されます」
やがて、「医療依存度は高いが在宅で生活せざるを得ない人」が多数生じるという。岩間院長が続ける。
「2025年以降、病院や施設などの受け入れ先がない患者が増えるはずですが、今度はそうした在宅の患者に対応できる訪問医や看護師が足りない、という問題に直面します。医療と介護でお互いにしわ寄せが向かい、それぞれの事情でマンパワー不足が生じるのです」
病院で死ねない時代が近付いている。
※週刊ポスト2022年3月4日号