ビジネス環境の先行きが不透明な今、企業トップの舵取りはより難しいものになるだろう。そうした中で、有名企業の次代を担う「後継者選び」はどのように進んでいるのか。
「次は創業家」と明言しているのがサントリーホールディングスだ。現在、“プロ経営者”として同社を率いる新浪剛史氏は、半年前のインタビューで「次は鳥井信宏副社長」と答えた。
そもそも同族経営のサントリーは、いずれも創業家である鳥井家と佐治家のたすき掛けの世襲が続いてきた。経済ジャーナリストの片山修氏が言う。
「4代社長の佐治信忠氏の後は鳥井信宏氏のはずでした。しかし、2014年に米ビーム社を買収して世界戦略を推し進めるなか、佐治氏は三菱商事、ローソンでの経験から国際感覚に優れる新浪氏を後任に迎え入れた。新浪氏に『信宏をしっかり鍛えてくれ』と頼んだそうです」
新浪氏の社長在任は8年目に突入する。日本企業において社長は「6年」が一般的とされ、“大政奉還”のタイミングが注目されてきた。同社40代社員が言う。
「昨年末から今年にかけて、鳥井さんが積極的に現場の声を聞きにくることが増えた。新社長になるにあたって状況を把握したいということではないかと囁かれています。信宏さんは非常に低姿勢で数字にも強い」
反対に世襲とは縁がないのがソフトバンクグループだ。ただ孫正義社長は後継候補を指名しながら度々、撤回してきた。
孫氏は近年、後継候補と目される外国人役員を高額な報酬で招いてきた。「69歳までに後継者に経営を引き継ぐ」と表明してきたが、2014年のニケシュ・アローラ氏は2年足らずで指名を撤回、自ら続投すると表明した。
「最近も孫氏が招聘したマルセロ・クラウレ副社長ら側近役員が続々と退社しています。一部では『報酬面で折り合いがつかなかった』などと報じられましたが、今回は急速に世界の投資マネーがシュリンクするなか、将来を危惧したと考えるのが真実ではないか。
現時点では、唯一の副社長で、投資会社ソフトバンク・ビジョン・ファンドを統括するラジーブ・ミスラ氏に絞られました。しかし、英アーム社の売却難航や大幅減益と苦境に立たされており、社長交代は最大の経営リスクでしょう」(経済ジャーナリストの森岡英樹氏)