ウクライナ情勢が緊迫し、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げを巡る動きも不透明な状況にあり、ビジネス環境の先行きは厳しい。日本企業は最高益を出すなど健闘しているが、5年後、10年後はより不確実性が増す世界が待っているだろう。トップの舵取りがより難しいものになるなか、有名企業の次代を担う「後継者選び」はどうなっているのか。
創業者の影響力が強い一代企業の後継者選びは、難航する。
〈永守氏の突然の離脱があった場合、NIDEC(日本電産)の事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります〉──日本電産の有価証券報告書【事業等のリスク】欄にはこうある。
同社を創業から一代で世界トップのモーター企業に成長させた永守重信会長が「悩みではなく苦しみ」と語るのが、“ポスト永守”問題である。永守氏には現在レック(東証1部の日用品メーカー)で社長を務める長男・永守貴樹氏がいるが、常々「親族に経営はさせない」と言ってきた。
その言葉通り、後継者候補となる人物を次々とヘッドハンティングしてきたがバトンタッチは成功せず、退任が続いた。
「前社長の吉本浩之氏の就任時はポスト永守を見据えた“集団指導体制”に移行したが、永守氏は『意思決定が遅くなった。創業以来で最大の間違い』と、ワントップ体制に戻りました」(経済ジャーナリストの森岡英樹氏)
現在、後継者候補の筆頭は、永守氏が2019年末に日産から引き抜いた関潤社長だ。ついに後継者が定まったかと思いきや、最近、永守氏と関氏に“不協和音”が報じられた。
「1月、米通信社ブルームバーグが『永守会長が関社長に失望している』との記事を配信したのです。永守氏は翌日の決算発表会見で『三流週刊誌のようなところが何か書いたから……』と切って捨てたが、日本電産株は連日の昨年来安値を更新しました」(経済ジャーナリストの有森隆氏)
関社長は至上命令の「売上高10兆円」という目標の成否が問われる。