徳島県警を退職後は犯罪コメンテーターとして活躍する「リーゼント刑事」こと秋山博康氏の連載「刑事バカ一代」。秋山氏が派出所(現交番)に配属されていた新人時代の思い出を綴る。
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おはようさん、リーゼント刑事こと秋山博康です。
徳島県警の警察官として42年間勤務したワシにも、もちろん若かりし新人時代があった。
1980年4月1日、警察学校を卒業したばかりの19歳のワシは、徳島市内の繁華街にある両国派出所(現両国橋交番)に配属された。警察官の制服に頭はリーゼントという異色のお巡りさんやった。
その2週間前に近くの徳島公園で22歳女性が遺体で発見された。新米警官のワシは何としてでも殺人犯を捕まえようと躍起になり、現場付近の通行人に片っ端から声をかけて100人以上を職務質問した。官庁街で誰彼構わず職質したので、相手から「私は検察官です」とギロリと睨まれることもあった。
この事件は迷宮入りしたが、「管内の犯罪をゼロにしてやろう」という一心やった。毎日朝から晩まで管内をパトロールして近隣住民とも顔見知りになった。
当時は自転車の窃盗が相次いだので、非番でも駅前の駐輪場に張り込み、自転車ドロを捕まえていた。盗まれた人の気持ちを第一に考えて、盗難自転車を持ち主に返却する時はピカピカに磨いてから返していた。
ワシの十八番である「非番張り込み」で捕まえた自転車ドロが、実は100件以上の空き巣を繰り返した常習犯だとわかり、先輩に褒められたこともあった。
繁華街にある派出所なので酔っ払いに絡まれることも多かった。
ある時、大声を発して道行く人に絡んでいる酔っ払い男を見つけて注意すると、「警察はだまっとれ!」と唾を吐きかけられた。
「公務執行妨害で現逮(現行犯逮捕)じゃ~!」
相手の手首を掴むと、男が逆に殴りかかってきた。
「警官を舐めたらあかんぞぉ!」
こちらも応戦し、渾身の一本背負いを決めると「うわぁっ!」という男の叫び声が二重に聞こえた。