徳島県警を退職後は犯罪コメンテーターとして活躍する「リーゼント刑事」こと秋山博康氏の連載「刑事バカ一代」。秋山氏が暴走族との向き合い方を綴る。
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おはようさん、リーゼント刑事こと秋山博康です。
先日は全国各地で成人式が行なわれた。ひと昔前は暴走族が大暴れして「荒れる成人式」がニュースになることが多かったが、最近はすっかり大人しくなったもんや。
ワシの刑事時代は暴走族の全盛期だった。新米刑事の頃、市民の安全を守るため暴走族の集会場近くでうんこ座りをしてメンバーにガンを飛ばしていたら、恐る恐る近寄ってきた2人組から「あの~、どこの組のお方ですか」と尋ねられて、「ワシは鳴門署の秋山や!このドアホ!」と一喝した。
そんなこんなで暴走族と顔見知りになると、「変わり者の刑事」として彼らに慕われるようになった。ワシの住む官舎にも連中が徒党を組んでよく遊びに来たが、そのたびにワシの愛車スカイラインをピカピカに洗車するのが恒例になった。まるでワシが暴走族の頭のようやったな(苦笑)。すっかり打ち解けた暴走族メンバーがネットワークを駆使して、手配中の盗難車を見つけてくれたこともあった。
ワシが暴走族と親しくしたのは、悪事に手を染めず更生してほしかったからや。彼らは“ダメ出し”ばかりの親と学校と警察を嫌う。自分がカッコいいと思った洋服や髪型を、「コラ、その格好は何だ!」と大人が頭ごなしに否定するから、反発して仲間だけで集まって、鬱憤を晴らそうと不良行動に走ってしまうんや。
ワシは「オウお前、粋な洋服やないか」とまず褒めることを心がけた。暑い夏に汗をダラダラ流してワシの愛車にワックスをかけた連中も「ようやったな」と声をかけアイスキャンディーを差し入れると、本当に嬉しそうにニコニコした。ワシは和気藹々と楽しめる場所を作り、彼らに立ち直るきっかけを与えたかったんや。