オバ記者:よし買うぞ!という、私なりの意気込みを挫いてどうするのって思うわけ。
橋本さん:なるほど。
オバ記者:スマホケースはね、小銭をチマチマとかき集めて買っているのよ。それが700円お得だと聞けば、それに乗るわよ。教えてくれてありがとう、と言いながら。
橋本さん:その気持ちがまさに別掲のグラフです。これは「損得にかかわる感情」を表していまして、横軸は左に行くほど損、右に行くほど得した状態を示します。
オバ記者:ふむふむ。
橋本さん:縦軸は上に行くほど満足感があり、下に行くほど不満を感じる。ここに先ほどの値段を書き込んでみましょう。出費はお金が減るので「損・不満」の枠に記入します。1800円と2500円の差は結構ありますから、「こんなに不満を感じるのはイヤだな。じゃあ15分ぐらい歩こう」という気持ちになる。行動経済学で「感応度逓減性」と称される心理です。
オバ記者:割合にしてもわかりやすいわね。700円とはいえ、全体の約30%ぶん安くなるんだもんね。
橋本さん:そうです。そしてこれが5万円になると、4万9300円とは微差。ほとんど差がない、と思ってしまう。母数の大きさによってお金の価値に対する痛みが違うんです。つまり5万円の場合、わずか1.4%しか懐が痛まない。
オバ記者:このグラフは下にいくほどカーブが緩やかになるのね。
橋本さん:そうなんですよ。
オバ記者:どのくらいの金額から行動が分かれるんだろうね。さすがに5万円のバッグでも半額になるんだったら15分ぐらい歩くよね。
橋本さん:たしかに。
オバ記者:1万円引きでも駆けつけるわ。
橋本さん:でも、大金持ちだったら、おそらく1万円の得では歩かない。このグラフは人によってカーブが違うんです。
オバ記者:なるほど、先生にぜひ「貧乏人の経済学」を教えていただきたいわ。