橋本さん:別掲図のような実験結果があります。高級チョコが半額になったときは7割の人がそちらを選びましたが、安価なチョコが0円になった途端、手のひらを返してそちらに群がる。これが無料のインパクト。タダに人は引き寄せられるんですよ。
オバ記者:“無料”のパワーの前では人は無力ですね。なんの抵抗もいたしません、ハイ。そういえば「アベノマスクの無料配布」に先生は応募しなかった? 7900万枚の在庫を無料で配るとなったら、2億8000万枚の配布希望があったのよ。ええ、私ももちろん応募しましたよ。それにしても、あれだけ悪口を言われてたマスクなのに、なんでそんなに欲しいんだろ? マスクとして使うかっていったら、布製で心もとないのに。
橋本さん:無料だからです。0円のチョコを大量に手に入れても、放置してドロドロにしちゃうかもしれないし、アベノマスクなんて使わないかもしれない。
オバ記者:だけど、もらわずにはいられない。人間の欲求っていうのはホントに……。そう考えると、先生の著書のタイトル(『9割の買い物は不要である』)通り、世の中はいらないものだらけかも。
橋本さん:ちなみに、机の上にあるポケットテッシュはもしかして、さっき駅で配っていたものですか?
オバ記者:そうそう。タイミングを逃してもらいそびれたから、わざわざ引き返してゲットしたわよ。しかも3つ!
橋本さん:……体現してますね。
100%と99%では天と地ほどの差がある
橋本さん:行動経済学には「確実性効果」という法則がありますが、次の2択だったら、どちらを選びますか?
【1】10万円を100%の確率でもらえる
【2】20万円を50%の確率でもらえる
この2つの選択肢を示されると、多くの人は【1】を選びます。たとえ金額が低くても確実に入手できる方を選ぶ傾向があるのです。
オバ記者:私も【1】がいいわ。
橋本さん:懸賞でもよくありますよね。グレードの高い賞品は当選者が1名だけど、ほどほどの品なら100名に当たる。本気で当てたいと思うときは当選者数の多い方に応募しがちです。
オバ記者:そうね、そうね。