タダのものにも価値が生じる
橋本さん:あっ!(テーブル上のお茶をこぼす)
オバ記者:先生、これ使って(と、駅前で受け取った無料配布のティッシュを差し出す)。
橋本さん:……いまティッシュがちょっとだけ惜しいという気持ちになりませんでした?
オバ記者:そう言われれば、はい。タダでもらったんだから、自分に損はないはずなのに。
橋本さん:そうそう。タダでもらったものだから捨ててもいいかというと、そうではない。そういう心理を「保有効果」と呼びます。いったん自分が持ったものに価値を感じ、手放したくなくなる、という気持ちです。
オバ記者:「無料」に関する教訓がわかった気がするわ。私の場合、「無料」と聞くと、それをゲットするために1時間以上かけて列に並んだりすることがあるけど、その時間と手間のぶん、実は損をしていたのかもしれないわね。目先の損得に左右されてはいけないってことね。「無料」という言葉にすぐに反応してはいけないのね。
(第3回につづく)
【プロフィール】
橋本之克さん/マーケティング&ブランディングディレクター。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。近著に『9割の買い物は不要である』(秀和システム)。
オバ記者こと野原広子さん/空中ブランコや富士登山など体当たり取材でおなじみのライター・野原広子。女性セブン連載『いつも心にさざ波を!』も好評。64才。
取材・文/藤岡加奈子
※女性セブン2022年3月3日号