AI(人工知能)技術が飛躍的進歩を遂げる昨今。多くの仕事が、AIに代替されるという指摘も多い。そうした時代で我々はどう生き抜いていけばよいだろうか。経営コンサルタントの大前研一氏が、来る“AI万能時代”での生き方について考察する。
* * *
前号(『週刊ポスト』2022年3月4日号)で述べたように、今年の私の研究テーマはアメリカの未来学者で友人でもあった故アルビン・トフラー氏のベストセラー『第三の波』をヒントにした「第四の波」、すなわち「サイバー&AI革命」が世の中にもたらす変化である。そして、これまでの3つの波には前半と後半があり、前半は雇用を大量に創出するが、後半はその雇用が削られていく、と指摘した。
2035年から2045年の間に「シンギュラリティ」(AIが人類の知能を超える技術的特異点)が起きると言われている。そこから先は多くの領域で“AI万能時代”が訪れる。
言うまでもなくAIに睡眠は必要ないので、24時間365日フル稼働だ。基本ソフトがパソコンもスマートフォンも事実上2つしかないサイバー社会のシステムは世界共通で国境がないから、1つの国で成功した新しいビジネスは瞬時に世界化できる。このプロセスの中で雇用はどんどんAIに奪われていくのだ。
AIなどに置き換えられる仕事については、すでに様々な研究が行なわれている。たとえば、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授とカール・ベネディクト・フレイ博士は2013年、アメリカでは10~20年以内に労働人口の47%が機械に代替できると試算した。日本では野村総合研究所が2015年、オズボーン教授らとの共同研究で日本の労働人口の約49%がAIやロボットに代替可能と推計している。
それが正しければ人間の仕事の半分が失われるわけで、生産性が上がったから給料を上げるというモデルは「第三の波」で終わると私は思う。
そうなった時に問われるのは、人間の役割は何か、ということだ。この質問を私の番組に招いたオズボーン教授にぶつけてみたが、全く答えがなかった。彼の研究はあくまでAIなどに置き換えられる仕事の種類と量の機械的な研究だった。
それに対し、私の答えは「構想力」である。これはAIにはないものだから、この力を持った人間は生き残っていけるのだ。