一番頑張ってるのは私
歌舞伎町の女はある種「男を立てる女」へと逆行している。そしてそこには、推す達成感の裏側にある「自己犠牲」を伴っているケースが多い。
「今は全部終わっちゃったけど。私も担当も全力で毎月ボロボロになるまで突っ切るあの感じが、最高に楽しくて……」
目を細めて懐かしそうに語るのはアミ(仮名・19)。1年間指名していたホストが卒業し、今はどこのホストクラブにも行っていないという。
「担当と出会ってから世界のすべてが変わったんです。応援するって決めて1年でガールズバー、メンズエステなど、どんどん稼げる仕事に移って行って。今月は80万稼げた、じゃあ来月は100万頑張ってみよう、みたいにどんどん一緒に目標を決めて、達成できたら嬉しくて。
初めて1日10万円稼げた時は担当に思わず電話しちゃいました。『自慢の姫だよ』って言われるのが嬉しかったんですよね。担当のために一番頑張っているのは私って思いたくて。金額的にも、精神的にも。結局1年で1000万近く使って、あんなに働いたのに貯金はゼロ(笑)。でもいいんです、担当がいなかったら稼げてないお金だから。4月から昼職に戻るとして、それまでちょっと働いて整形でもしようかなと思ってます」
あっけらかんと語るアミだが、ホストを卒業した担当に未練はないのだろうか。
「もっと頑張ればよかったかな、とか思いますけど。でもホストとしての彼を最後まで推せたんでいいんです。もう彼はただの一般人だから、私にとやかく言う権利ないし……。これだけしんどい思いして、またイチから頑張りたいって思えるホストに出会える気はさすがにしませんね。風俗も格差の加速でドンドン稼げなくなるだろうし。
ただ、全部の時間をお金に換算しちゃったり、稼げることに固執するような歪んだ価値観と金銭感覚が残ってしまったのだけが不安です」(アミ)
コロナ禍による寂しさが原因と一概には言えないが、女たちが大金で「会えるアイドルとのストーリー」を買うのと同様、男たちも性的行為にストーリーとロマンを求める者、単純に欲求を解消するだけの者の二極化が激しい。「風俗じゃないスレていない素人の女の子と、段階を踏んで仲良くなりたい」といった願望が満たされ、金額も交渉次第なパパ活も、人気を博している。