コロナ禍で「夜の町の壊滅」がささやかれる一方、2021年には、歌舞伎町歴代最高記録である年間5億2000万円の売上を記録したホストが登場した。1億円プレイヤーのホストはほかにも続々と現れている。空前のホストバブルを支えるのは、従来のような疑似恋愛というよりも「ファンとアイドルの関係性」を求める若い女性客たち。15歳から歌舞伎町に通うライターの佐々木チワワ氏がレポートした。【全3回の第2回。第1回を読む】
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「SNS上のインフルエンサーを、カッコイイ! と思ってフォローしたんですよ。そしたらDM(ダイレクトメッセージ)が来て。ヤバ! 推しからDMが来た! とか思ってたら彼がホストを始めて。そのままアタシも店に行くようになり、今じゃすっかり、ホストに夢中です。推しに会いに行くのに、コロナも何も関係ない」
そう語るのは大学を秋に中退し、現在風俗で働いてホスト代を稼いでいるというミコ(仮名・20)だ。彼女の言う“推し”とは主に、直接的なコミュニケーションをとらず一方的に好意を寄せるアイドルなどを対象に使われてきた言葉だ。
「もともとジャニーズが好きで、アイドルに貢ぐのに抵抗はなかったんです。それがSNS上では、かっこいいって思ってた人と実際に連絡できて、会えて。普通のアイドルじゃありえない。ホスト始めるって聞いて応援したくなって。やっぱ推しにはキラキラしていてほしいし。アタシが好きな推しが売れてないとかありえないんで」(ミコ)
今では月100万円以上使う時もあるという。
「大学の友達とか、ぶっちゃけ話が合わないんですよ。普通に恋愛してる人とか。そういう話聞いてる時間あったら働いて推しにお金を使いたいし。もともとやりたいことがあったわけでもないので、大学はやめちゃいました。今は同じように推しのために風俗をしている友達と話すばっかりですね。時折何してるんだろうって怖くなるけど、以前の退屈な生活に戻る気はないです」(同前)
取材を進めるうちに、若者たちのなかでは普通の恋愛をする者と、恋愛よりも「推し活」に力を入れる者とで二分される傾向があることが判明した。推し活をする女子同士でつるみ、推しへの愛を語り合う。恋愛はコスパが悪い。そんな意識が垣間見えた。
「相手はホストで、あくまで推しのアイドルっていう体裁があるから、“ガチ恋”に至らずとどまっている気がします」