銀行を取り巻く環境は大きく変わっている。あわせて「預金者は銀行の支店に行ってサービスを受けられる」という当たり前だった光景も様変わりしようとしている。
マイナス金利政策による利ざやの縮小に加え、ITによる業務の効率化などを背景に、メガバンク3行が大規模な人員・業務量・店舗数の削減計画を打ち出したのは、2017年末のことだった。
同年12月、全国銀行協会会長だった平野信行氏(三菱UFJフィナンシャル・グループ社長=肩書きはいずれも当時)は会見で、「強い危機感を持って事業改革に取り組まないといけないことが、より明確になった1年だった」と危機感を表明。その時期に前述の大規模な削減計画が打ち出された。
人員面では2024年までの間にメガバンク3行で合わせて3万人超の人員減が見込まれている状況がある。
最も踏み込んだのがみずほ銀行だ。同行の人員は21年度末に1万1000人減(2016年度末比)に達する見込みで、2026年度末までに計1万9000人減(同)を目指す構造改革を進めている。
バブル時代に大量採用された人員を主な対象に、転出などで組織のスリム化を図るなどしており、予定通りに進めば、2026年度末までにパートを含めたもともとの従業員数の4分の1が削減されることになる。
「公表しております計画については自然減と新卒採用の抑制をベースに策定しており、早期退職や退職勧奨については現時点においては検討しておりません」(みずほFG広報室)というように、メガバンク3行はいずれも「希望退職などの積極的なリストラではない」ことを強調する。とはいえ、銀行内での受け止められ方は深刻なようだ。
融資も「AIが判断」へ
金融ジャーナリストの浪川攻氏が語る。
「新規採用を大幅に抑制することで、メガバンク各行の人員数は実際に減少しています。しかし、そのような人員削減に踏み切ったことによる先行きへの不安で、中堅・若手の辞職や転職が誘発されている。みずほの場合、昨年の大規模システム障害発生後のドタバタに嫌気がさした中堅層の行員の退職が相次ぎました。なかには将来を嘱望された人材が辞めたケースもあり、中期的には“現場力”の弱体化が懸念されるような状況です」