なぜロシアのプーチン大統領は、国際社会から非難を浴びることが明らかなウクライナ侵攻に踏み切ったのか──。経営コンサルタントの大前研一氏は「ロシアとプーチン大統領の側に立って“ロシア脳”で見てみるとウクライナ問題には別の一面があることがわかる」と指摘する。どういうことか、大前氏が解説する。
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本稿執筆時点(2022年3月11日)では、ロシアのウクライナ侵攻が長期化・泥沼化の様相を呈し、犠牲者や避難民が増え続けている。
アメリカやEU(欧州連合)はロシアへの経済制裁を強化しているが、それに対し、ロシアのプーチン大統領は「ウクライナが抵抗をやめてロシア側の要求を満たした場合のみ、軍事作戦を停止する」と述べ、一歩も引かない構えである。
言うまでもなく、ロシアが主権国家のウクライナを侵略することは許されない。私は、自分が主宰している経営者の勉強会「向研会」の視察などでウクライナを何度も訪問し、同国の人々に親愛の情を抱いている。ロシアの軍事侵攻は極めて遺憾であり、速やかな戦争終結・和平を祈るしかない。
一方、日本のマスコミ報道を見ていると、なぜプーチン大統領が国際社会から非難を浴びることが明らかなウクライナ侵攻に踏み切ったのか、さっぱりわからない。単純にプーチン大統領を横暴で残忍非情な独裁者と批判し、米欧を正義と位置付けているだけである。
だが、そういうレッテル貼りは、無意識のうちに“アメリカ脳”で世界を見ているからにほかならない。その逆に、ロシアとプーチン大統領の側に立って“ロシア脳”で見てみると、ウクライナ問題には別の一面があることがわかる。
むろん、私は親露でも反米でもない。だが、あえて“ロシア脳”で考えれば、プーチン大統領がウクライナ侵攻に踏み切った理由が見えてくる。歴史的な視点からすると、“アメリカ脳”と“ロシア脳”の両方を併せ持っていなければ、国際問題に対して的確な判断はできないと思う。